生徒の添削課題の事例 vol.1


プロライター養成講座 基礎コースでは、最初に「二十歳から人生をやり直せるとしたら」というテーマのブログ風の記事を出題します。媒体は、自己肯定感を育て直すための己育てWebマガジン『Roots』。読者ターゲットは17歳、高校生3年生。

 

この記事を書いてもらう意図は、自分のことを振り返り、自分がどういうフィルターを持っているかに気づいてもらうこと。価値観、モノの見方は、人それぞれです。プロとして文章を書くには、「客観視」する必要性があるのですが、そのためには自分がニュートラルな状態で、どういうフィルターを持っているのかに気づいてもらいたいのです。

 

1期生の方の共通点は「二十歳に戻りたい」とは思わない……というメッセージ。M.Mさん(40代女性)の事例を紹介します(ご本人に許可を得ています)。もともと文章がお好きで、文章構成がしっかりした方です。

1回目は導入に凝り過ぎて長くなってしまっています。導入が上手な方ですので、これはなるべく活かしてもらいたいということはお伝えしました。読者は「オトナへの歪んだ視点」を持っているかもしれない思春期。そこで、先入観や決めつけとなるような言い回しは減らすよう添削指導しました。


また、「自分を愛する」ことを勧めることについて唐突なイメージがあったので、その理由や背景を足していくように伝えました。

 

思春期の男女にとって「説教」となってしまう可能性のある内容であること、「自分を愛する」という言葉の持つ重みなど、筆者と読者の感覚の差を埋めていく作業です。

 

 

「文章力」と一口に言ってもさまざまですが、私はこの読者と筆者の感覚のギャップを埋められるかどうかが、大きなポイントのひとつであると捉えています。

 

今回の場合、「オトナ=説教する人・理解してくれない」と解釈している可能性のある思春期の学生が読者ターゲット。上から目線ではなく優しいメッセージを伝えたいと思っていることが伝わること、筆者自身に興味を持ってもらえることも重要です。ということで「具体的なエピソード」が欲しいと思い伝えたところ、少しずつ内容が変わってきています。バージョン3では、キャリーバッグひとつで家を飛び出したエピソードが書かれています。読者と筆者の距離がグッと近くなりました。

 

 

具体的な添削の内容については、生徒さんによって違いますので端折ります。このようにご自身の文章を少しプロに見てもらうことによって、違ってくるのだという体験を、Roots文章表現塾ではお伝えしています。課題は、この他、インタビュー記事(媒体や読者ターゲットも設定します)も書いていただきます。